睡眠時ブラキシズム(Sleep bruxism:以下、SB)診断のゴールドスタンダードは、音声ビデオ付き睡眠ポリグラフ検査(Polysomno-graphy with audio-visual recording:以下、PSG-AV)1)とされているが、一般臨床で行うことは困難であるため、これまでは歯ぎしり音の指摘や歯の咬耗などの臨床所見からSBを診断するしかなかった。SBの臨床診断基準の1つであるAmerican Academy of Sleep Medicineによる基準(ICSD-3)2)では、歯ぎしり音の指摘があり、かつ異常な歯の咬耗、顎筋の痛みや疲労感、頭痛、開口障害などの臨床所見を1つ以上認めた場合にSBと診断する。しかし、歯ぎしり音を指摘する人がいない場合がある、「くいしばり」のような歯ぎしり音の出にくいタイプがある、歯の咬耗は過去のSBによって生じた可能性がある、顎関節症の発症には日中の嚙みしめやストレスなどが関連している可能性があることなどから、問診と臨床所見によるSB診断の正診率は高くないことが指摘されてきた。また、問診と臨床所見からだけでは客観的かつ定量的な診断ができないため、SBの重症度や予後を評価することは難しかった。 しかし、第3章4において解説したとおり、患者自身による自宅での測定が可能なウェアラブル筋電計が医療機器として認証、製品化され、2020年4月の保険診療報酬改定において、「睡眠時歯科筋電図検査(580点)」として保険収載された。そこで、ウェアラブル筋電計の歯科医院での運用の仕方、実際の症例について紹介する。118岡田和樹Kazuki OKADA北海道・医療法人社団 卸町歯科医院第4章 症例でみる睡眠時ブラキシズムへの対応睡眠時歯科筋電図検査(580点) 睡眠時歯科筋電図検査は、問診または口腔内所見等からSBが強く疑われる患者に対し、診断を目的として、睡眠時の筋活動を定量的に測定した場合、一連につき1回に限り580点を算定することができる。なお、検査の実施にあたっては、「筋電計による歯ぎしり検査実施に当たっての基本的な考え方」(令和2年3月日本歯科医学会)3)を遵守することとされており、この基本的な考え方には、目的と概要、筋電図検査の対象者、実施方法、そして診断・評価方法について記載されている(図1)。 また、当該検査料を算定するには、厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして、地方厚生局長に届け出る必要がある。施設基準は、①当該検査を行うにつき十分な経験を有する歯科医師が1名以上配置されている、②当該保険医療機関内に歯科用筋電計を備えている、とされており、現時点で適応している歯科用筋電計は、ジーシー社製のウェアラブル筋電計のみとなっている(図2)。1歯科医院での マネジメント・メインテナンス
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